乾電池で駆動するIoTのシステムを運用する場合、どの程度の間隔で電池交換が必要かを見積もりしておくことは重要です。
消費電流を測定することでおよその見積もりをたてることができるので、今回はPPK2(Power Profiler Kit II)を使って、Wio BG770Aの実際の消費電流を測定してみました。

この記事でわかること
- PPK2でWio BG770Aに電源供給しながら電流を計測する手順
- Wio BG770Aの各動作状態(LTE-Mでメッセージ送信時・Idle状態)の消費電流の実測値
使用機材
私が実際に購入した場所を記載していますが、同じものであれば何でも構いません。
JST-PH2ケーブル、ジャンパーワイヤー、ワニ口クリップはPPK2とWio BG770Aの接続のために使っています。
| 機材 | 詳細 | 入手先 |
|---|---|---|
| IoTデバイス | Wio BG770A | SORACOM |
| 電流計測ツール | Nordic Semiconductor PPK2(Power Profiler Kit II) | 秋月電子 |
| JST-PH2ケーブル | JST PH 2ピン ケーブル | Amazon |
| ジャンパーワイヤー | オス–オス | — |
| 中クリップ付コード | 秋月電子 |
PPK2とは?
PPK2はNordic Semiconductorが販売する電流測定ツールです。
約200nA〜1Aまでの幅広い電流値をカバーしており、Wio BG770Aのような省電力のマイコンの測定に使えることで人気のデバイスです。 およそ15,000円ほどしますが、数千円の電流計だとmA〜の測定しかできないので、省電力なマイコンのスリープ状態(μA単位)の測定には重宝します。
PPK2には、電源供給と電流計測を同時に行う、Source Meter Modeがあります。 今回はこれを使って、PPK2からWio BG770Aに電源を供給しながら電流を計測します。
PPK2では、供給電圧を設定できるので、4.5V(単3電池3本 × 1.5V)に設定して測定しました。 フィールド運用での乾電池駆動を想定した条件です。
nRF Connect for Desktopでの設定
測定はPCに「nRF Connect for Desktop」というアプリをインストールして実施します。 Power Profilerで消費電流の測定ができます。

「Enable power output」をオンにすると、電力供給が開始されます。 これは測定とは独立しているので、測定前にオンにしておきます。
測定は「Start」を押すと開始されます。
BG770Aへの接続
BG770Aの電源はJST-PH2コネクタ(基板左下)から供給します。 PPK2のVOUT端子とGND端子をWio BG770Aの電源コネクタに接続します。
| PPK2端子 | Wio BG770A側 |
|---|---|
| VOUT | JST-PH2 赤(プラス) |
| GND | JST-PH2 黒(マイナス) |
他にもVINとGNDがもう1つありますが、これらは使用しません。
PPK2に付属しているコネクターはデュポンケーブルと呼ばれるもののメスです。 ジャンパーワイヤーのオスが刺さるので、ジャンパーワイヤーのオスを繋ぎます。 ジャンパーワイヤー反対側を中クリップ付コード -> PH2コネクタと接続していきます。

計測結果
接続した状態で「Start」を押すと測定が開始されます。
何もしない状態だと測定しても面白くないので、今回は10秒に1回HTTP POSTでメッセージ送信するプログラムを書いて、測定してみました。
送信ピーク時は80mA、送信待機時は30mA程度で推移しています。 やはりメッセージを送るタイミングで大きく消費することが分かります。

あれ、消費電流高すぎでは?
元々PPK2を買った理由は、μA単位の消費電流を測定するためでした。 しかし、今回の結果はメッセージを送信していなくても、mA単位での消費になっています。
この消費電力だとどの程度の期間、電池持ちするでしょうか?
乾電池は、流す電流の大きさによって容量が変化しますが、ここでは簡単に2000mAhとします。 また、平均消費電流も実測値38.33mAを丸めて40mAとします。
2000 mAh / 40mA = 50h = 2日と2時間
たった、2日しか持ちません。 これでは電池交換が頻繁すぎて、運用が現実的ではありません。
なぜ、ここまで消費電流が大きいか?
消費電流が大きい理由は、LTE-Mモジュールの電源が常にオンだからです。 10秒間隔という高い頻度でのメッセージ送信のため、常にLTE-Mのモジュールに電源が入ることになり、電力消費が増大しています。
Seeed社のWikiに記載の通り、通信せずに待機している時は80μA程度で推移することは私の手元でも確認しました。
80μAであれば、3年弱と大幅に改善します。
2000 mAh / 80μA = 25000h ≒ 2.85年
LTE-Mモジュールの電源を落とす方法として、単純に電源Offにする方法とLTE-MのPSM(Power Saving Mode)の2種類があります。 次回は、この2つのモードでの消費電流を測定してみたいと思います。
電源スイッチの存在にご注意
セットアップする際、Nordic Semiconductor公式のYoutubeを見ながらケーブルの接続をしていました。
動画の手順通りにUSBでPCに接続してもPPK2が光らず、「初期不良引いた?」と思い焦りました。 (たまたま最近買ったMacbook Airも初期不良で交換したので、初期不良の疑い癖ができていました笑)
オチとしては、本体をよく見てみると、実は上部にPOWERスイッチがあり、これをオンにするだけでした。 意外と見落としやすいので、「動かないな?」と思ったらチェックしてみてください。

まとめ
今回は、PPK2を使ってWio BG770Aの実際の消費電流を測定してみました。 PPK2は難しそうに見えるので身構えていましたが、実際にやってみたら1時間もかからず消費電力が測定でき、使いやすさを感じています。
IoTに詳しい人は、「Wi-FiやLTE-Mで通信するデバイスは送信電力が圧倒的に大きいから、バッテリー駆動させるならいかに通信を減らすかが大事」と口を揃えて言いますが、 今回はそれが体感できて面白かったです。
次回は、LTE-MのPSMモードを使用した時とLTE-Mモジュールの電源を落とした時の消費電流の測定を行います。



