SORACOM GPSマルチユニットを1か月使った実測レビュー

温度・湿度・加速度・位置情報が1台で取得できる「SORACOM GPSマルチユニット」を1か月使って、どこまで実用的か検証しました。

今回の検証条件は以下です。

  • 使用期間: 約1か月
  • 主な利用場所: 自宅
  • 送信間隔: 10分ごと(全センサーデータ)
SORACOM GPSマルチユニット本体
SORACOM GPSマルチユニット本体

購入場所と仕様は以下に公式情報があります。

結論から:このデバイスは買い?

結論として、温度・湿度や位置情報を短期間で取りたい用途にはかなり有効です。
一方で、加速度データで精密判定をしたい用途や、回線コストを極限まで抑えたい用途には向きません。

強み

  • 温度・湿度の取得と可視化を短時間で始められる
  • 移動体の位置をざっくり追跡する用途に向いている
  • 初期構築の手間が少なくPoCが速い

特に「まず1台で検証したい」段階では、センサー選定・通信設計・可視化基盤の立ち上げを1つにまとめられる点が強みです。

弱み

  • 加速度はノイズが多く、精密な判定には不向き
  • 回線をSORACOM以外に切り替えられない
  • 通信費が継続して発生する

そのため、量産前提の長期運用では、台数増加時の総コストと運用制約を最初に試算しておく必要があります。

このデバイスで取得できるデータ

取得できるデータは大きく3種類です。

  • 環境データ: 温度、湿度
  • モーション/位置: 加速度(x, y, z)、位置情報(GPS)
  • 運用監視データ: バッテリー残量、電波強度

詳細なデータフォーマットは以下の公式ドキュメントに記載があります。

センサーデータだけでなく、運用監視に必要なバッテリー残量や電波強度が最初から取れるので、現場設置後の監視設計がしやすいです。
また、SORACOM Lagoonで可視化すると、検証段階なら短時間でダッシュボードを組めます。

SORACOM Lagoonのダッシュボード画面
SORACOM Lagoonのダッシュボード画面

かかる費用

個人利用なら SORACOM Harvest Data / Lagoon の無料枠で収まるケースが多いです。
ただし本体費用と毎月の通信費は固定で発生します。

項目金額補足
初期費用(合計)13,040円本体 12,100円 + 送料 940円
通信費(IoT plan-D SIM)385円 / 月デバイス1台ごとに発生
SORACOMサービス費無料枠あり利用量が増えると課金

デバイスで設定できること

設定項目は多すぎず、初期導入で迷いにくい構成です。主に次の3つを決めます。

  • 取得するデータの種類
  • 送信間隔
  • 加速度検知時の割り込み設定

逆に言うと、低レイヤーの細かい制御を幅広く触りたい人向けの機器ではありません。
「まず動かして、すぐ結果を見る」ためのバランスだと感じました。

このデバイスの良い点

例えば、Raspberry Pi + AWS で同等の仕組みを作る場合は以下のようなステップでの開発が必要です。 GPSマルチユニットを使えば、これらのステップなしにいきなりデータ収集と可視化ができます。

  1. 1

    Raspberry Pi側の物理接続(センサー・ブレッドボード)

  2. 2

    ネットワーク接続(Wi-Fi)

  3. 3

    データ取得コード実装(MicroPython)

  4. 4

    クラウドセットアップ(AWS IoT Core + Timestream)

  5. 5

    可視化(Grafana)

環境構築だけで半日〜1日かかるのが現実です。GPSマルチユニットを使えば、この全工程が不要になります。

このデバイスのイマイチな点

加速度センサーにノイズが発生する

デバイスを動かしていなくても、加速度値は常に変動します。
z軸の -1000 付近は重力加速度(約1G)由来で仕様通りですが、それ以外の揺れも継続的に出ます。

加速度の変動の様子
加速度の変動の様子

SORACOM以外での利用不可

本デバイスはSORACOM SIM(plan-DD-500MB)とバンドル提供で、APN変更ができません。 そのため、既存SIMの流用や他社回線(例: 1NCE)での運用はできません。

本体代に加え、通信費(385円 / 月)が継続して発生するため、大量導入を行う予定があれば、総コストを事前に計算しておきましょう。

バッテリー持ち

このデバイスは1,500mAhバッテリー搭載で、コンセントが取れない環境でも運用できます。

公式FAQにもバッテリー持ちの目安がありますが、せっかくなので今回実測もしてみました。 結論としては大きな差分はなく、少し悪目の結果がでました。 おそらく、電波があまり良くない場所においていたので、掴める電波サーチしたりといったことで消耗したものと推測しています。

  • 公式FAQ目安: 10分ごと送信で約1週間、1時間ごと送信で約2週間
  • 実測結果: 10分ごとに全センサーデータ送信で約6日

送信データにバッテリー残量が含まれるため、バッテリー残量が減った時の通知を設定しておくと運用しやすくなります。
通知先はSORACOM Lagoon(Grafana)でも、SORACOM Funk + AWS Lambdaでも実現可能です。

結論:このデバイスは「誰」が買うべきか

判断の目安として、次のように分けると検討しやすいです。

買いな人

  • Wi-Fiがない場所の温度・湿度をすぐ可視化したい人
  • はんだ付けやAWSセットアップに半日かけたくない人
  • 営業車・社用車の位置をざっくり把握したい人

初期検証のスピードを重視する場合は、非常に相性が良いです。

見送るべき人

  • 精密な振動・衝撃検知をしたい人
  • 100台以上の大量導入で通信費を極限まで下げたい人
  • Wi-Fi環境だけで使う前提の人

特に「精密な加速度判定」と「超低コスト運用」を同時に求める場合は、別構成を検討した方が失敗しにくいです。

まとめ

SORACOM GPSマルチユニットは、温度・湿度と位置情報を短時間で取得して可視化する用途では、かなり強力な選択肢です。
一方で、加速度はノイズが多く前処理が前提になるため、精密判定の主センサーとしては注意が必要です。

導入判断は、次の3段階で進めると失敗しにくくなります。

  1. まず1台で1〜2週間動かし、送信間隔・バッテリー持ち・可視化運用を確認する。
  2. 次に3〜5台へ広げ、設置場所ごとの電波品質とバッテリー持ちのばらつきを確認する。
  3. 最後に「必要な精度を満たすか」「台数増加時の総コストが許容範囲か」で本導入を決める。

最短で現場データを取り始めたいなら、まずは小さく始めて、数字を見てから広げるのがおすすめです。

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